「みなす」と「推定する」の違い

Pocket

kokubann

 

法律を学習していくと、「みなす」と「推定する」という言葉が頻繁に出てきます。

特に民事系の法律や契約書には「みなす」と「推定する」がよく出てきます。

(例1)民法753条
「未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。」

(例2)民法772条1項
「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。」

 

この「みなす」と「推定する」という2つの用語は、一見同じような印象を受けますが、実は、法律上は全く異なった用いられ方をするので注意が必要です。

「みなす」と「推定する」については様々なサイトで解説されているとは思いますが、ここではさらに詳しく紹介していこうと思います。

 

みなす」について

「みなす」は、擬制規定であり、みなされた事柄を、反対事実を証明して覆すことはできません

「Aであれば、Bとみなす。」という規定があった場合、「Aである」以上は、どんなにBではないと主張・立証しても、「Bではない」とされることはないということです。

卑近な例を挙げると、「キャベツは、果物とみなす。」とされていた場合、どんなに「キャベツは果物ではなく野菜だ!」と主張して、キャベツが野菜である証拠をもってきても、「キャベツ=果物」を覆すことはできないということです。

先の(ケース1)の例「未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。」でいえば、婚姻をした者が「私はまだ18歳だから成年に達していない!」と主張して、戸籍や出生記録を持ち出して18歳であることを主張・立証しようとも、「婚姻をした未成年者=成年」ということを覆すことはできないのです。

そもそも擬制規定が用いられる場合、前提事実Aは、Bではないことのほうが多いです。

なぜならAはBでないからこそ、あえて「Bということにしましょう。」という取決め(ルール)をしていると考えられるからです。

 

推定する」について

「推定する」は、推定規定であり、推定された事柄を、反対事実を証明して覆すことができます

「Aであれば、Bと推定する。」という規定があった場合、例えAであったとしても、Bではないと反証することに成功できれば、「Bではない」とされます

「スカートをはいていれば、女子と推定する。」とされていた場合、例えばスカートをはいている男性が、戸籍等を証拠として男子であると主張することにより、「女子」であることを覆すことができます。

先の(ケース2)の例「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。」でいえば、「夫はその期間ずっと刑務所に入っていて妻との性交渉が一切なかった。」ということを証明して、「妻が婚姻中に懐胎した子=夫の子」ということを覆すことができます。

推定規定は、「Aという事実があれば普通はB」という前提のもとに、A=Bを証明することが難しかったり、A=Bを証明させることが不公平に感じるような場合などに、A=Bを証明しなければならない人の立証の負担を軽減するために設けていることが多いです。

 

法律事務(パラリーガル実務)を学びたい方は、こちらから!


法律事務所に就職できる「AG法律アカデミー

個別無料相談会(説明会)のお申し込みは ➡ こちらから